近年、契約社員やアルバイトなど非正規雇用の労働者を雇用する会社が多
くなり、当オフィスにも雇止めに関するお問い合わせを多くいただいてお
ります。
雇止めは判断基準がわかりにくく、誤った判断で実行してしまうと、労使紛
争に発展してしまい、会社は多くの時間と多額の費用を浪費することになり
かねません。
そうならないためにも、今回は、「非正規雇用者の雇止め」についてわかり
やすく解説していきたいと思います。
雇止めとは、有期雇用契約を締結している労働者を契約期間満了時に契約
更新をせずに、契約を終了させることをいいます。
雇止めについては、過去の膨大な裁判例により、次に掲げるタイプに該当
する場合、雇止めを無効とする傾向が強いと言えます。
1.期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約であ
ると認められたもの(実質無期契約タイプ)
2. 期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約であ
ると言えないまでも、雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性があ
ると認められたもの(期待保護タイプ)
それでは、どのような場合に「実質無期契約タイプ」あるいは、「期待保護
タイプ」に該当するのかを裁判例で指摘されている6つの判断要素を用いて
解説すると以下の通りとなります。
<業務の客観的内容>
従事する仕事の種類・内容・勤務の形態に関して、正社員とどの程度同一
性があるのか
→正社員と比べて業務内容や業務上の責任などの負担が軽い場合等、正社員
と明確な違いがある場合は、雇止めを有効とする可能性が高くなります。
<契約上の地位の性格>
雇用契約上の地位が基幹的か臨時的か、又は労働条件について正社員と相違
しているか
→正社員と採用の際の手続きが異なり簡易であったり、労働時間が短かった
り、正社員とは異なる就業規則が適用される場合は、雇止めを有効とする
可能性が高くなります。
<当事者の主観的態様>
継続雇用を期待させる使用者の言動、雇用契約期間や更新ないし継続雇用の
見込み等についての使用者からの説明を行っているか
→採用の際に、「勤続3年以上で正社員にします」や「契約期間は形だけで、
長期間雇用します」などの労働者に期待を持たせる言動を行っている場合
は、雇止めを無効とする可能性が高くなります。
従って、採用時には、労働者の継続雇用の期待を持たせる言動は避け、必
ず更新の有無、更新条件、さらには雇止めに関する説明を行うことが重要
です。
<更新の手続き・実態>
反復更新の状況(反復更新の有無、回数、勤続年数等)や契約更新時におけ
る手続きの厳格性の程度(更新手続の有無、時期、方法等)はどのようにな
っているか
→契約更新の回数が多かったり、勤続年数が長かったりする場合、雇止めを
無効とする傾向にあるのは事実ですが、契約更新が何回までなら雇止めが
有効かという判断基準は今のところ存在しません。最初の契約更新拒否で
雇止めが無効となった裁判例もありますし、契約更新回数が20回で、勤
続年数21年の労働者の雇止めが有効となった裁判例もあります。
従って、あくまでも契約更新の回数や勤続年数は、一つの判断基準に過ぎ
ません。
<他の労働者の更新状況>
同様の地位にある他の労働者の雇止めの状況はどのようになっているか
→勤務成績が悪い又は服務規律違反を繰り返す問題社員は適宜雇止めにする
など、雇止めの実績があれば、雇止めを有効とする可能性が高くなります。
<その他>
有期雇用契約を締結した経緯、勤続年数、年齢等の上限の設定はどのよう
になっているか
→前回の契約更新時に「次回の契約更新はしない」ことを合意していたと
か、契約更新の回数の上限を設けていたなどの措置を講じているのであ
れば、雇止めを有効とする可能性は高くなります。
しかし、「次回の契約更新はしない」旨の記載がある雇用契約書に労働者
の署名があったとしても、契約更新しない理由などをきちんと説明せず
形式的に手続きが行われていた場合は、雇止めを無効としている裁判例
があります。
契約社員やアルバイトなどの非正規雇用者の雇止めを行う際には、上記の
6つの判断基準を満たしているかよく検討した上で実行するようにしてく
ださい。
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